蜃気楼を勝手に解釈してみました

 

 

 

今回はこの前のブログでレビューした、Kis-My-Ft2のアルバム「Yummy!!」の収録曲の「蜃気楼」という歌の個人的解釈を載せてみようと思います。

毎度の如くめっっちゃ勝手に解釈したものになりますのでこれが正解!というわけではありませんので悪しからず(笑)

 

 

 

 

 

 

 


そもそも、蜃気楼とは何だ?という説明から。

ざっくり言うと存在するはずのない幻が見えることです。景色が揺らいで見えたり、ものが宙に浮いて見えたり、ひとつのものが2つに見えたり。

光の屈折の関係で現れる自然現象で、写真に収めることもできます。主に3月~5月の春の時期の日中に見ることができます。よく耳にする陽炎(カゲロウ)も蜃気楼の1種です。

 

 


まず1番の歌い出し、力強い北山さんのソロパート。雑踏=都会の人混みから抜けて海際へ抜け出す。波音が雑音をかき消している。

この「抜け出す」というワードは現実逃避の意味だと捉えます。実際に海にいるわけでなく、たくさんのもので溢れている都会から目を逸らし、記憶の中にあるいつかの海辺へスリップする。

そうしたら聞こえてきます、「二人きりみたいだね?」の声。いつか聞いたことのある言葉。

 


夢見心地な玉森さんパート。聞こえてきたその声の持ち主は笑顔でいつか彼に語りかけたのでしょう、でも今の彼のもとに彼女はいません。彼女は夏の終わりと同時に消えてしまい、今では""のような存在となってしまった。

 


続けて透明感のある藤ヶ谷さんパート。こうやって目を閉じれば彼女との思い出はいつでも蘇る。しかし、どうしても記憶の中なので語りかけることは出来ない。言えなかったサヨナラも伝えることが出来ない。ここで、この2人は不本意に別れてしまったことが分かります。別れる予兆もなく、サヨナラさえ言えず突然会えなくなってしまった関係。

 


サビ。フラッシュバックする彼女との記憶は時と共に色が薄れていき、段々モノクロとなってゆく。でもそれら全て、両手で抱きとめたいくらいに失くしたくない記憶ばかり。今でも近くに気配を感じるほどに大切な存在だった彼女も、今は""としてでしか会えない。やるせない気持ちと共に空を仰ぐ彼。

 

 


二番。ここからシチュエーションが少し変わります。

まず苦い二階堂さんのパート。沖に浮かぶ"幻"、つまり蜃気楼のことでしょう。今彼がいるのは都会ではありません。記憶の中の世界ではない、実際に海辺に来ています。その場で彼女と砂浜に残した足跡を探していることから、そこは彼女との思い出の場所。ひと夏を過ごした場所。そこで見た蜃気楼に遠くへ連れて行ってくれと願っています。遠くにいる彼女の元へ連れて行ってくれということでしょうか。

 


憂いを帯びた千賀さんパート。全歌詞のなかで唯一「君」という単語が出てきます。あの時の僕は君が全てだったんだよ、と彼女に話しかけるような台詞。しかし彼女は夏が終わると同時に消え去ってしまった。もしかしたら、不本意な別れではあるけど、何らかの事情で彼女自ら彼の元を離れたのかもしれませんね。

 


未練を感じさせる横尾さんパート。一見藤ヶ谷さんパートと同じ意味に捉えられますが、目を閉じることで「記憶が蘇る」より「君と一緒に居ることが出来る」ほうがより未練を感じさせる表現ですよね。実際に思い出の地に来たことで、彼女に会いたい気持ちがさらに募ったのでしょう。

 


悔しい感情に溢れた宮田さんパート。アリガトウを伝える前に彼女の面影は消えてしまう。彼はサヨナラよりアリガトウのほうが伝えたかった言葉なのかもしれません。それほどに気持ちを注いでいた愛おしい存在だったのでしょう。

 


二度目のサビ。モノクロとなってしまった彼女との記憶が、今度は薄れていってしまいます。彼女の顔や声が段々思い出せなくなる。まるで目の前から消えてゆく蜃気楼のように。どこへ行くの、行かないで。行くならまだここに残っている恋心も連れて行って。そう訴えかけているようで胸が痛みます。しかしそんな願いも虚しく、蜃気楼は波に溶けて消えてしまいます。

 

 


Cメロに入り、またシチュエーションが変わります。北山さんが歌っているパートの通り、海が満ちる時間…つまり夜。それを暗い夜空が包み込み一面は闇に覆われます。そこで聞こえる「目を閉じるだけですぐ会えるよね?」の声。

ここのパートで山本領平様の文学的なセンスが光っていると感じたのは、明日が訪れたことを「Fall upon me」と「陽が登る」の二つの言葉で表している所です。Fallは本来落ちてくるという意味。陽が登って明日が落ちてくる。真逆の方向の運動を組み合わせて一つの時間軸を生み出していること、絶妙なバランスの中で作られた世界観だと鳥肌が立ちます。


そしてここで一つの疑問が生まれました。ここで聞こえた台詞は何だろう?そもそも蜃気楼は昼の時間にしか現れません。今は夜なのに、彼女の"幻"が現れているように思えます。夜から朝方にかけて見ることの出来る幻……まさか、この台詞は彼が寝ている時に見た"夢"の中での彼女の言葉ではないでしょうか?

そう考えると納得がいきます。なぜかと言うとこの台詞、少し違和感を感じます。彼女が言いそうもない言葉です。だってこんなこと言ったらもう二度と会えないと伝えているようなものです。この二人は予兆も無く離れ離れになった関係のはずなのに。

彼女との記憶が薄れつつある中、夢の中に彼女が出てきて、目を閉じればすぐ会えるよね?と聞かれるなんて。彼からしたら「私のことを忘れないで」と訴えられているような感覚になるでしょう。

 

 


ここで最後のサビ。同じフレーズの繰り返しではあるものの、シチュエーションが違うぶん一番のサビと捉え方がガラッと変わります。夢の中でやっと会えた彼女を抱きしめる彼。消えないでと何度も願います。しかし夢は覚めてしまうものです。腕の中に残る彼女の感覚だけ残して目が覚めてしまいます。空中に泳がせる両手は行き場を失くしたまま。

 


そして大サビ後の余韻が残る消えそうなパート。もう夢の中には戻れないのに、消えないでと、行かないでと願います。

極めつけはバックサウンドがぷつりと途切れた北山さんのソロ。蜃気楼に行かないでと消えそうな声で呟きます。歌詞に何度も出てきてる「Don't go」の言葉。行かないでという意味ですが、この北山さんの最後のフレーズのみ「Please don't go」になっています。Pleaseがつくことにより、"行かないでください"と下手に回るようなニュアンスになります。蜃気楼が彼女を連れ去ってしまう、と思っている彼は「お願いだから彼女を連れて行かないで下さい」と、より強く願う印象になりますね。

 

 

 

 


この歌の一番の特徴と致しましては、シチュエーションが都会→海辺、続いて時間軸が昼→夜へと変化していく様子が繊細に描かれているところです。それによって変化する彼の感情の波に胸を打たれます。

こんなに壮大で、ドラマチックで、残酷な物語。正直ジャニーズの歌に留まるにはもったいないと思います。もっといろんな人に聞いてほしい。


果たして蜃気楼が本当に連れ去ったのは「彼女の面影」なのか「二人で居た記憶」なのか「彼自身」なのか。聞く人の感性や価値観でどうとでも解釈できる、不思議な魅力を持った歌だと思います。

あなたはどう解釈しますか?

 

 

 


山本領平様の作った歌ですと「Flamingo」と「One Kiss」もおすすめです。過去にブログに詳しい解釈を上げているので、聞いたことない方はぜひ見てください♡

 

http://hncoo81457.hatenablog.jp/entry/2017/05/31/230942

 

 

 

Yummy!!(通常盤)

Yummy!!(通常盤)